
AV情報家電 家電製品アドバイザー(エグゼクティブ等級)のyacchiです。
露出を決める3要素は、F値・シャッタースピード・ISO感度 です。
写真であればF値を小さくして光を多く取り込む場合は、シャッタースピードを速くして取り込む光の量を調整して露出を調整できます。
写真であれば、シャッタースピードを速くしても手振れがなくなるのでデメリットはありません。
しかし、これと同じことを動画撮影でやると、画像に不自然さが生じる可能性があります。
今回は、『動画撮影時のシャッタースピード』について記載していきます。
- シャッタースピード について
- 写真撮影におけるシャッタースピード
- フレームレート について
- 動画撮影におけるシャッタースピード(一般論)
- 動画撮影におけるシャッタースピード(検証)
- 動画撮影における適切なシャッタースピード
- シャッタースピードを遅くするために必要なNDフィルター
- シャッタースピードとフリッカーとの関係
シャッタースピードとは
シャッタースピードとは、シャッターが開いている時間のことです。
シャッタースピードは1秒、1/2秒、1/4秒・・・1/250秒、1/500秒のように表します。
数値が小さいほど速いシャッタースピードとなります。
シャッタースピードを速くすると、光が撮像素子にあたる時間は短くなり、シャッタースピードを遅くすると、光が撮像素子にあたる時間は長くなります。
写真撮影におけるシャッタースピード
写真撮影においては低いF値でボケを演出したい際などに、シャッタースピードを速くして露出を調整することがあります。
写真撮影の場合は、一瞬を切り取るものなので、シャッタースピードはいくら速くても問題ありません。
むしろシャッタースピードが速い方が手振れを防ぐことができます。
動画撮影におけるシャッタースピード
動画撮影でも露出を調整するためにシャッタースピードを速くすることはできます。
しかし動いているものを速いシャッタースピードで撮影すると、1コマあたりが細かくなり、動画の動きが不自然に見えてしまうことがあります。
人間の脳は、動きのある映像はブレるもの、という認識があるためです。
これブレをモーションブラーと呼びます。
モーションブラーとは
モーションブラーとは、動いている被写体を撮影した際に生じる「ブレ」のことです。
カメラのシャッター速度が被写体の動きに追いつかないために起こる現象で、被写体が動いた方向に沿って像がぼやけます。
動きの速い被写体を撮影する場合、モーションブラーが発生しやすくなります。
フレームレート
動画は連続した静止画で構成されています。
アニメが複数の絵をつないで動画にしているのと同じです。
フレームレートとは、動画1秒間が何コマの静止画で構成されているかを表します。
30fps、60fpsなどfps (frames per second)の数値で表され、30fpsであれば1秒間の動画に30枚の静止画が含まれています。
このfpsの数値が大きいほど1秒間に多くのコマがあり、滑らかな映像になります。
テレビのフレームレートは30fps、映画は24fpsが一般的です。
動画撮影におけるシャッタースピード(一般論)
動画撮影での適切なシャッタースピードの一つの基準として用いられるのが、「 フレームレートの2倍」の設定値です。
例えば、30fpsなら1/60、24fpsなら1/48、という感じです。
適切なシャッタースピード = 1/フレームレートx2
なぜ、1/フレームレートx2 が適切な動画のシャッタースピードと言われているのでしょうか。
それは、映画撮影用のカメラの回転シャッターが180度開口していたためです。
映画用カメラでは、シャッターは円形で、その一部が遮光されており、回転することで光の入射時間を制御しています。
シャッターは通常360度の円盤で、遮光部分がその半分である180度を占めています。
シャッターを180度にすると、シャッターが1回転する間の半分の時間(180度分)光がフィルムまたはセンサーに当たります。
つまり、シャッターが開いている時間が全体の1/2になります。
この180度の開口を基準として、シャッタースピードがフレームレートの2倍の逆数に設定されます。
映画で言うと、24fpsの場合、シャッタースピードは1/48秒【1/(2×24)】になります。
動画撮影におけるシャッタースピード(検証)
実際に動画撮影においてシャッタースピードを変えて撮影してみました。
以下の動画をご覧ください。
前半の水滴が落ちる動画では、シャッタースピード:1/50 が自然で、シャッタースピード:1/1600 は、水滴の粒まで見えてしまい不自然です。


後半の旗の動きは割とゆっくりと遅い動きなので、シャッタースピードを速くしてもそんなに不自然さはありません。


動画撮影におけるシャッタースピード(検証結果)
実際に検証した結果は以下です。
- 動きが速い場合は、シャッタースピードを遅くした方が自然
- 動きが遅い場合は、シャッタースピードを速めてもあまり問題ない
一般的には、「適切なシャッタースピード = 1/フレームレートx2」 と言われていますが、そこまでシビアになることはないと思います。
表現は自由なので、どのように表現したいかで、シャッタースピードを設定すれば良いと思います。
シャッタースピードを遅くするために必要なNDフィルター
動画撮影時は、単純にシャッタースピードを速くして露出調整ができません。
しかしシャッタースピードを遅くしようと思うと、昼間など明るい場合は一番低いISO感度に設定しても露出オーバーになってしまうことがあります。
そういう場合に必要になってくるのが、NDフィルターです。
特に明るい昼間の動画撮影では必須になってきます。
写真撮影でも、長時間露光で滝を絹のような表現にしたい場合などにNDフィルターを使用します。

NDフィルターとは
NDフィルターとは、減光フィルターとも呼ばれ、レンズに装着することでレンズから入る光の量を減らすことができるフィルターです。
レンズに付けるサングラスのようなものです。
入ってくる光の量を減らすことができるので、シャッタースピードを遅くしても適正露出に設定することが可能になります。
NDフィルターの減光の強さは数字で表されます。
NDnは、「n分の1」の明るさになることを示します。
たとえばND8ならば1/8の明るさ、つまり3段分暗くなることを示します。
NDフィルターには一つの減光だけのものと、可変で減光できるものがあります。
私が購入したNDフィルター
動画撮影をやられる方が多く使っているのが、NiSiのNDフィルターです。

ただ、値段も割とします。
私は少しでも節約したいので、以下のものを購入しました。

動画撮影でメインで使用する『SONY FE 20-70mm F4 G』に装着するために、フィルター径72mmものもを購入しました。
NDフィルターを購入する場合は、使用するレンズのフィルター径に合わせたサイズのものを選びましょう。
私が購入したものは、ND2~32までの可変式で、ND32でもX状のムラなく問題なく使えています。
このNDフィルターを購入した後に気づいたんですが、キャップが付属していませんでした。
なので追加で以下のキャップを購入しました。

シャッタースピードとフリッカーとの関係
フリッカーとは
フリッカーとは、蛍光灯などに生じる細かいちらつき現象のことです。
普段、肉眼で蛍光灯を見て分からないのですが、実は人間の目には見えない速い速度で点滅しています。
電源には周波数があり、これが蛍光灯の点滅回数を決める要素となっています。
周波数は東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツとなっています。
蛍光灯はこの電源周波数の倍の周波数で発光していますので、東日本では1秒間に100回、西日本では120回点滅をしています。
このため、蛍光灯の光が入る場所で動画撮影すると、光のちらつきが映ってしまうことがあります。
フリッカーとシャッタースピードの検証(西日本 60ヘルツ)
実際にLED電球の動画撮影においてシャッタースピードを変えて撮影してみました。
私の住んでいるところは岐阜県なので、電源周波数は60ヘルツの地域です。
以下の動画をご覧ください。
- 撮影する電球・蛍光灯や撮影地域で検証結果が異なることがあります
フリッカーとシャッタースピードの検証結果(西日本 60ヘルツ)
実際に検証した結果は以下です。
- シャッタースピード:1/50、1/60 は、フリッカーは気にならない
- シャッタースピード:1/2500は、フリッカーが出る
→西日本では1/60で撮影すれば良い
私は普段、4K 24fps で撮影していますが、基本は 1/60か 1/50 のシャッタースピードにしておけば問題がないと思います。
東日本に旅行に行った際も、1/50 のシャッタースピードにしておけば問題がないはずです。
フリッカーを動画で撮影しないためには
動画の中でフリッカー現象が生じるのは、蛍光灯の点滅とシャッターのタイミングにズレがあり、連続して撮影した静止画の中に明るい画像と暗い画像が混在してしまった場合です。
蛍光灯の点滅とシャッターのタイミングが一致すれば、フリッカー現象は起きません。
周波数が50ヘルツの東日本で撮影する場合、シャッタースピードを1/100秒にするか、1/100の倍数である1/50秒や1/25秒に設定すればフリッカー現象を防ぐことができます。
周波数が60ヘルツの西日本で撮影する場合、シャッタースピードを1/120秒にするか、1/120の倍数である1/60秒に設定すればフリッカー現象を防ぐことができます。
フレームレートを24fpsで撮影する場合、東日本で1/50秒で、西日本の場合は1/50ではなく1/60秒で撮影すれば良いです。
フレームレートを30fpsで撮影する場合、東日本では1/60ではなく1/50秒で、西日本の場合はそのまま1/60秒で撮影すれば良いです。
まとめ
写真撮影ではシャッタースピードは適正露出になるように手振れしない範囲で設定をすれば良いのですが、動画撮影の場合はシャッタースピードを速くしすぎると不自然な動きに見えてしまうことがあります。
一般的には、「適切なシャッタースピード = 1/フレームレートx2」 と言われていますが、あくまで目安で、そこまで厳密にしなくても良いと思います。
ただし、フリッカーが発生する照明を動画撮影する場合は、電源周波数を考慮して、以下を目安すると良いでしょう。
- 東日本では、シャッタースピード:1/50
- 西日本では、シャッタースピード:1/60
そして、昼間の撮影でシャッタースピードを遅くするためにはNDフィルターが必要になってきます。
この記事が動画撮影の参考になれば幸いです。
これからも「カメラ」カテゴリーでは、私の【カメラ成長記】としてブログを随時更新していきます。
それでは、楽しいオーディオ・ビジュアルライフを!!





















※この記事の内容はあくまで個人の見解で、間違っていたり、最新でない可能性があります。できるだけ公式サイトのリンクを貼っておきますので、正しい情報は公式サイトをご確認ください。
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